【夫婦関係】相手に不満を感じたら読んで欲しい一冊。黒川 伊保子著・夫婦脳 ~夫心と女心は、なぜこうも相容れないのか~
夫(もしくは妻)に対して、こんな感情を抱いたことがありませんか?
- 結婚して変わってしまった
- 何を考えているのかわからない
- ちっとも自分のことをわかってくれない
そして、
「あんなに好きでたまらなかったなんて、とても信じられない」と。
最近私が夫に感じた不満を例に出します。
- 「子供をお風呂に入れて欲しい」と言ったら、「なんで?」と理由を尋ねられた。(そこに理由は必要なの?)
- 「ハンカチがない」というので、いつもの引き出しを見たらちゃんとそこにある。(どうして目に入らないの?)
- 会話がかみ合わない。(そこ?というところで突っ込まれ、ムッとする)
これはまずいと思い、夫婦問題に関する本を何冊か買い求めました。
これからご紹介する本は、脳科学を専門とする著者が「男と女の脳の仕組みの違い」によって生じる夫婦のすれ違いについて、スーパーわかりやすく・かつ面白おかしく解説した男女のための応援エッセイです。
相手の脳の仕組みを知れば、理解に苦しむ相手の言動も少しは受け入れられるようになるかも……?
- 夫もしくは妻に不満がある
- 夫婦仲がこじれつつある
- できることなら夫婦仲を改善したい
そんな方に読んで欲しいです!
▼夫婦脳 ~夫心と妻心は、なぜこうも相容れないのか~
黒川 伊保子 著(新潮文庫)
大恋愛をした二人ほど相性は最悪
いきなりショッキングな事実をお伝えします。
夫婦ほど、脳科学的に興味深い関係も珍しい。なにせ、生殖相性(遺伝子配合の相性)は、人としての相性に反比例する。男女は、生殖相性の良さを察知して恋に落ちるので、「激しく愛し合った二人」ほど、人間相性は最悪ということになる。(p.3)
つまり、生殖するために出会った二人は生殖相性は最高だけど、性格や価値観といった人としての相性は最悪……ということですね。(しかも遺伝子レベルで)
この「生殖相性の良さ」をなぜ察知できるかというと、無意識のうちに「フェロモン」を嗅ぎ取っているからです。
フェロモンには役割がある。異性には、遺伝子情報(免疫抗体の型)を匂いで知らせているのだ。動物たちは、なんと、生殖行為に至る前に、互いの遺伝子の生殖相性を、確認しているのである。
生殖の相性は、免疫抗体の型が遠くはなれて一致しないほどいい。理由は、異なる免疫の組み合わせを増やすほど多様性が増え、子孫の生存可能性が上がるからだ。(p.27)
つまり、男女というのは、互いに無意識下で「子孫を残せるかどうか」を最重要項目として相手を見つけているということですね。しかも、遺伝子情報ができる限り異なる相手を本能で嗅ぎ分けている。
「免疫抗体の型が遠くはなれて一致しない」というのは、「危機的状況に遭遇した時に、互いが同じ判断をせず真逆の行動をとる」ということ。
こうすることで、不幸にも夫婦どちらかが命を落としても、どちらかが生き残って子供を守り育てることができるというわけです。
夫もしくは妻に対して、「価値観が合わない」「やることなすことイラつく」と感じるのは、夫婦というのが「同じ判断をせず真逆の行動をとる」組み合わせになっているから。(しかも、そうなる相手をあえて選んだ…というのがミソですね。)
そして、このように「合わない」と感じている夫婦ほど、科学的に見ると「夫婦としては最高の組み合わせ」「結婚して大正解」ということになりますね。
夫婦というのは、なんともややこしく、そして罪深い……!!
「相性最悪の相手と、なぜ結婚するのか」という疑問
ここまで読んで、「ふむふむ。夫婦というのは、そもそも人としての相性が悪いのね。じゃあ、なんで相性最悪の二人が結婚できるの?」と疑問に感じたあなた。
その答えはこうです!!
一定期間は、相手のあらさがしをしない“あばたもえくぼ”期間が用意されている。しかし、その期間が過ぎると、「この人、何考えているのかしら?」「なんで、そうなるかなぁ」というため息が急に増える。(p.4)
人としての相性が最悪とわかってしまったら、せっかく見つけた「生殖相性バツグン」の相手をみすみす逃してしまうことになります。
そうなると子孫は残せません。
だから、恋する二人には「恋は盲目」の期間が用意されています。
何をしても許せる。むしろ愛らしい。いじらしい。あなたじゃなきゃダメ!!
……みたいな?
蜜月とはすなわち、生殖するために与えられた期間。
それを過ぎると、愛し合った相手ほど「イラつく」相手になってしまうのです……。
ひえーーー!!
「夫婦は一心同体」の本当の意味とは?
結婚披露宴などで使われやすい、このフレーズ。
「一心同体」というと、「心も体も一つになるほど強く結びつく」という意味で使われますね。
これを脳科学的に解釈すると、こうなります。
心を一つにするのは、健やかな暮らし=よりよい生存という生物としての使命を果たす思いにおいてであり、「同じことを感じ、考える」ことではない。(p.60)
「夫婦は一心同体」の本当の意味は、「お互いの気持ちが手に取るようにわかり、まるで自分と相手が同じであると感じてしまうほどの強い絆」といったキレイゴトではない。
「趣味が合う」とか「自分のことを一番わかってくれる理解者」ということよりも、「生き残る」という目的のために、夫婦は「一心同体」であるべきなんですね。
そして、生きる目的は、やはり自分の遺伝子(子孫)を守るためなのです。
どこを切り取っても、夫婦という関係は動物的です。
より良く生きるためには、夫婦は真逆なほうがいい。
「男女は物の見方が違う」と著者は言う。
神は、この世に、男性脳と女性脳をお創りになった。片方は、空間全体を把握して、すばやく危険を察知したり、獲物までの距離を正確に認識したり、複雑な図面を理解したりする。もう片方は、自分の周囲を密に把握し、もの言わぬ赤ちゃんの健康管理をし、食べ物の腐敗を見分け、他人の嘘を見抜く。(中略)この組み合わせは、とても合理的だ。(p.59)
男性脳は、全体を俯瞰して見るので、近くの細かいことには気付きにくい。
女性脳は、近くにあるものをじっくり観察するので、小さな変化に気付きやすい。
まさに、「目の前にあるハンカチをないという夫」にイラつく理由ですね。
しかし、男女で物の見方が違えば、夫婦が揃うことで多角的に物を見て判断することが可能です。
遠近両用のハイブリッドより、一方に秀でた能力がふたつあるほうが、危険を回避するための判断が早くなり、生存確率も高まるということらしい。
夫婦は真逆でいいんですよ!
それが夫婦の真の姿なんです!(イラつくけど!!)
結論を求めるのが男、共感してほしいのが女
話はすっかり変わって、大抵の女性はおしゃべりが大好きですよね。
街角のカフェで、学校で、会社のランチで、女性らはたちまち会話に花が咲き、時間が経つのも忘れてしゃべりまくります。
「そうそう、そうなんだよね〜」「わかる〜!!」という会話は、女子特有のものではないでしょうか?
そんな女性とは対照的に、このような男性もいます。
- 女性がおしゃべりに興じるのを見て、「よくあんなに喋ることがあるな」と呆れる男性。
- 「要点は何?」「結論は?」と、会話の着地点を急かす男性。(そしてそれにイラつく女性)
右脳と左脳の連携がよく、感じたことが即ことばになる女性脳。だから、女たちは、感じたことを感じるままにどんどんことばにしていくのである。逆にいえば、脳に溢れることばを口から出さないとストレスが溜まる。(中略)
最初から効率的な情報交換をするつもりは毛頭ないのである。(p.33)
女性のおしゃべりは心を平穏に保つための手段なんですね。
そこに目的や結論なんて不要なのです。
いっぽう男性は、
男性脳は、右脳と左脳の連携が頻繁でなく、それぞれの半球を局地的に使う癖がある。このため、「感じたことをことばにする」際に、まずは右脳のイメージ処理の領域で、事象を整理してからことばに変えるのである。(p.34)
だから男性は、女性に比べて口数が少ないし、結論から物を言いたがる。
さらに、女性の「わかる〜!!」は、「共感しているよ」という相手へのメッセージ。
女性は、自分がどきどきしたり、不安に感じた過去時間を、夫にもたどってほしいのである。(中略)だから、ことの最初から、臨場感たっぷりに語って聞かせるのだ。別に、頭が悪くて、結論から云えないわけじゃない。(p.20)
そう。女性は共感してほしい生き物。
強い共感を感じあえる人には信頼が増すし、もっと親しくなりたいと思う。
目的がないように思える女のおしゃべりは、共感や信頼を得るための重要なコミュニケーションなのです。
このコミュニケーション能力があるからこそ、昔も今も、コミュニティに溶け込みながら、女性は子供を産み育てることができたのでしょう。
だから、男性諸君。女性(妻、恋人)のおしゃべりには、ぜひ「そうなんだ〜」「それはすごいね〜」と共感してほしい。
たとえ話を半分しか聞いていなくても。
まとめ
この本では、「女性脳」「男性脳」という言葉が頻繁に出てきます。
それぞれの脳の仕組みと違いを知ることで、相手のことをより深く理解できる。
まさに、「相手を理解して上手く付き合っていくための指南書」と言ってもよいでしょう。
しかし、性別が男だから男性脳、女性だから女性脳とはっきり区別できるものではないと思います。
実際に私は、「この部分は女性脳だけど、こっちに関しては男性脳っぽいな〜」と考えながら読み進めました。
また、夫の言動を振り返りながら、「夫はこういうところが女性脳。ちょっと女々しい感じがするのはそのせいか……」などと、ほくそ笑みながら読みました。
夫婦だけでなく、恋人同士や職場の同僚など、身近にいる人を想像しながら読んで見るのもおすすめですよ!